つり橋/明石海峡大橋を見ると、その長さと大きさで、圧倒的な存在感に魅了されます。設計マンは一度は設計してみたいと思うでしょう。
しかし、難解な耐風設計や耐震設計を習得する必要があるため、若手エンジニアには敷居が高いようです。耐風設計は別項にあります。
そこで、つり橋の計画や設計・施工・精度管理(メンテナンスは割愛)を大雑把に理解できるPPTを作成しました。覗いてください。

番号タイトル内容備考
5-1つり橋の計画と設計川田忠樹氏の名著「現代の吊橋」を参考に若手エンジニアまたは大学院生向けに編集した。つり橋を建設する場合、その立地
条件をどのようにつり橋に適合させるか?景観的なマッチングは近年重要であるが深くは立ち入らない。経済性を重視した
議論になる。
5-2つり橋の架設法つり橋の架設は、ケーブルの架設が肝である。日本では、ケーブルメーカが行う仕来たりで、鋼橋メーカーはタッチしない。
海外メーカーは、一括して請け負うので勉強する。この点が、日本メーカーが海外で苦戦する理由である。
世界進出を目指すなら、架設法の習得は非常に大切である。
5-3つり橋の架設管理架設を精度よく仕上げるには、斜張橋で詳しく述べた架設精度管理が重要である。つり橋の形状を保持して、支点反力の
コントロールを行うことが主になるが測定方法など述べる。
5-4長大橋の振動制御日立造船は、アクティブ制御に関西大学の古田均名誉教授の指導の下Fuzzy制御を採用してきた。
日立造船において実施した例を示し、その他、桁の制振法など山口宏樹博士の構造振動・制御(共立出版)を参考に述べる。
5-5Lusail- Marine-Bridge
(自碇式つり橋の照査)
Lusail Marine Bridge は、カタールに建設された自碇式つり橋である。カタール(Qatar)国の頭文字Qの主塔形状を持つ。
衣裳デザインのため、前例がなく、2011年にサムスン建設が受注したが、完成は2018年末のようである。筆者は、
此花大橋の経験から、ハンガー長さを調整する斜張橋の構造特性を持つと進言し,EXCEL Sheetを作成した。
設計(COWI)と架設(SAMSUNG)の責任所轄で建設が長引いたが、現在では、素晴らしい都市景観となっているようだ。
田中は架設途中の2014年に帰国したが、SAMSUNGはハンガー張力調整法を改良して完成させたと思われる。
5-6此花大橋の設計

此花大橋の製作と架設
此花大橋は、斜めハンガーを有する自碇式つり橋です。世界に一つだけしか存在しない貴重な橋です。
田中は設計から、製作・架設まで携われ、つり橋を理解することが出来ました。その記録を日立造船技報に掲載しました。
予算の縮小で大阪市が工事誌を発刊できなかったことから、ここに、紹介する技報が、自碇式つり橋を建設するときに
読まれているようなのでご参考ください。
5-7此花大橋の架設写真建設現場が日立造船の陸機設計者から近かったので、田中は頻繁に架設現場に通って写真を撮影した。貴重な記録である。
5-8谷瀬のつり橋
谷瀬(たにせ)の吊橋は、奈良県吉野郡十津川村の上野地と対岸の谷瀬(たにぜ)を結ぶ、十津川に
架かる吊り橋である。橋長:297.7m、水面からの高さ54mで、1954年(昭和29年)に架橋された。
土木学会選奨土木遺産(2021年9月)